日本語 English



SPECIALIST INTERVIEW


プロのレーシングドライバーであるミハエル・クルムさんに、インタビューする機会を得ました。

もちろん聞きたいのは旅に関することでした。
しかし彼はバイク乗りでもあり、トライアンフ製バイクを愛車としています。
そこで旅のこと、バイクのこと、レースのことにも触れながら長時間のインタビューが実現しました。
本来の意図とは変わってしまいましたが、その話の内容をとくとご覧いただきたいと思います。



あなたが初めて日本に旅したのはいつですか?
確か1992年か1993年です。
レースの仕事でマカオへ行って、その次の週には富士スピードウェイで世界選手権がありまして、F3というF1の下のクラスに参加するための来日でした。

その時どんな気持ちでしたか?
日本に旅をするという感覚はなく、レースのことしか考えていなかったですね。

初めて日本に来た時の印象は覚えていますか?
初めての時は成田空港に到着して、そのまま山中湖に行ったので、東京は素通りしました。
成田からバスに乗って、東京観光なんてすることもできないまま山中湖の方のホテルに泊まりました。
それも、レースのためのツアーでの移動だったから、一般の観光客のように色々と見たり、多くを体験することはできませんでしたね。
翌年も来日しましたが、前年同様の動きだったので、最初の2回ではあまり日本を知ることはできませんでした。

そうですか。ではあまり日本の印象はなかったということですか?
日本の印象というより、東京の印象はなかったというのが正確だと思います。
山中湖に滞在していたので、私は、日本の都市部ではなく、先ずは豊かな自然環境を体験しました。
あっちこっちに盆栽があって、湖もあって、日本は美しく素晴らしいと感じました。
また、皆さんがとても優しく接してくれたことが心地よく、とても良い日本滞在体験となりましたよ。
日本人はとても優しいという印象が強かったです。

その後、何度も日本に来る機会が増えたのですね?
富士スピードウェイで良い結果を出せたので、何度も日本に来る機会が増えて、結果的に日本にずっといられるようになったんです。

日本に滞在する時間が長くなったことで、初来日当時と日本に対する印象は変わりましたか?
私は御殿場に4年間いましたが、当時は英語の表記はほとんどないし、ナビもインターネットもないので環境や風習に慣れるまでは苦労しました。
最初の頃、表示板にはローマ字や英語の表記がなかったので自分で移動するのが難しかった。
ナビもない、インターネットもない、携帯もないという状態だったのでちょっと難しかったんですね。
でも文化とか言葉の勉強になりましたから、印象が変わったというより便利になりましたね。
でも日本に対する印象は最初から良かったですよ。

今では多くの国からたくさんの人たちが日本に来るようになりましたが、あなたがここだけは行っておいた方が良いという場所(観光・見物)や、これだけは食べた方が良いというお勧めのものはありますか?
外国人は寿司が好きな人が多いけど、僕はそうでもなくてとんかつが好き。
それはたぶんドイツと日本に似ているものがあるからなのかな。
ただ自分の国で食べて日本の寿司が好きと思っていても、日本で食べないと実際のところはわからないと思う。
実際に食べたことのある友だちに聞くと「レベルが違う」って言う。
だからぜひチャレンジしてもらいたいかな。
それから行くべきところというのは、お勧めは箱根や富士山の方なんだけど、山の上の方までワインディングを楽しむのに乗りものがないとね。
ただ、旅行で日本にやって来る人たちは、みんな僕みたいにクルマやバイクに簡単には乗れるわけではないですからね。
だから、なんでも良いので可能な範囲で何とか乗りものを用意して、箱根や富士山の周辺まで、ワインディングロードや森の中まで行ってみてほしいと思います。
富士山に登るのも良いと思うんだけど、ドライブしていても普通ではあまり考えられない面白いところがいくつかあるんです。
なので、景色を楽しむだけじゃなく、運転も楽しんでほしいと思います。
自転車だって良いと思いますよ。

いろんな国でいろんな場所を走られていると思いますが、日本ならではの魅力がありますか?
山が多いこと。
それも高すぎない。
だから短い時間でいろんな景色が楽しめるのが面白い。
残念ながら日本に来た当初、まだ御殿場に住んでいた頃はそういうのがわかっていなかったんだけどね。
とにかく同じ場所でも、季節ごとに異なる美しい景観に出会えるのが日本ならでは魅力だと思います。

そして、日本ではこれに注意したほうが良いというアドバイスはありますか?
食べものに関して気をつけないといけないのは、いきなり生きてるものが出てくるということがあるから、 ショックを受ける人もいますね。
それは注意した方が良いと思う。
日本食を食べてみたくても専門店に行くのはちゃんと調べてからに店を選ぶのが良いと思います。

運転について言えば、スピード制限が非常に低いということ。
僕はドイツ出身だからちょっと特別で、子供の頃から200km/hで移動するのが普通のことでした。
だけど日本はそうじゃないので、ちゃんとルールを守って捕まらないように注意しなくちゃいけない。
でも問題は日本の道路はスピード制限がわかりにくいということ。
外国ではナビでもスピード制限が出てくるから助かる。
それと日本は左側通行だから集中する必要があるけど、それは日本人が外国に行っても同じこと、僕なんか日本が長いので、この前ドイツに行ったときはガソリンスタンドから出るときにヒヤッとする場面があったね。
だからルールを理解して間違えないようにしたい。
あとはマナーを守ってほしい。
日本ではクルマも綺麗で、ルールもしっかり守っている。
日本はそういう社会なんだけど、全部の国がそうではないから日本に来てドライブするなら敬意を持って日本のルールに従ってほしい。
日本は安全だから怖がる必要はない。
他の国で走る方が全然危ない。
でも日本でびっくりするのは、自転車が反対方向から来ることが多い。
それは気をつけた方が良いけど、日本では普通のことと思って怒らないで。
外国ではあり得ないと思うけど、特に東京は道が狭いから歩く人にも気を付けないといけない。
だから自転車で移動するのも気を付けてほしい。
最近は左端に自転車レーンが用意されているところもあって、それは良いこと。
道が狭くて気を付けないといけないのは、歩く人も同じこと。
この間も運転していたらぎりぎりで道路を横切る人がいて、車がいなかったら渡っても良いけど、「どうしてギリギリでわたるの?」って。
とにかく注意して回りを見てほしい。

仕事柄レースのために世界中を旅する機会が多いでしょうが、個人的に旅は好きですか?
プロレーサーとして旅するというのは仕事の一つとしてしょうがないことですね。
ホテルからサーキットへの移動だけになって、そして帰るというのが多いです。
ドイツで生まれたので、子どものころからイタリアとかに行ったりしたけど、仕事でレーシングドライバーになった29歳くらいからは、寒い時期に南の国に行かなければならなかった……スペインとかポルトガルとかイタリアとか。
だけどそれはエキサイティングでした。
新しい文化を知ることができたり、体験したりできたので。
もちろん良いところがあり、もちろん危ないことに遭遇したりもしましたけど。

旅が好きで、乗り物好きであることがレーサーとして成功を収める要因であると思いますか?
あまり関係ないですね。
レーシングドライバーとして世界を回れるというのはラッキーですし、普通には行けない遠いところ……アルゼンチンなんかに行けたりもしました。
それは凄く面白い経験だったけど、旅が嫌いな人でもレーシングドライバーとして成功する人もいる。
嫌いな人は食べものが理由だったりする場合もあるみたいだけどね。

忙しい時間をやりくりして、プライベートでの旅を楽しまれたりもしますか?
モナコに住んでいたことがあって、南フランスの方にあるんだけど、裏側にアルプスがあって、近隣にはイタリアやフランスがある。
僕は山の上に行くのが好きなので、そういった地域をバイクで走ったりしていました。
法律的にバイクで山の中に入れるところは少なくて、人も歩いていて子供が散歩するようなところなのに大きなバイクも走れるというのはめずらしい。
そういう場所では、みんながそれぞれ注意しながら共存している。
イタリアからフランスの間に60㎞くらいのオフロードがあって、個人的にはそこがとても好きです。
面白いんです。
そこでのライディングはとても良い体験でしたし、良い思い出です。
とにかくヨーロッパでは、1200~1300kmくらいなら飛行機を使わずにバイクやクルマで移動していました。

プライベートではクルマよりバイクの方に積極的に乗られたりするんですか?
どんな乗り物を選択するか?は場合によりますし、荷物の量にもよります。
バイクで走るならば、オーストリアからスイスの辺りが特に好きです。
そこへ行くまでは移動が長いけど、現地にバイクを持っていれば凄く楽しめます。
日本のように混んでいることもないから、移動中も運転を楽しめますからね。

プライベートの旅とレースのための旅では気持ち的な違いはありますか?
もちろん全然違う。
レースのときは意識から違っていて、あまり旅とは言えない。
解放的な気分ではないし、スケジュールは全部決まっているので旅とは言えないんだけど、世界中の面白いこともいっぱい見られる。
ただ移動が危なかったりすると(人のマナーのせいで接触事故の危険があったりとか)、レースに集中できないので面倒臭いですね。

レースの旅もプライベートの旅も、どちらの場合も旅を快適に過ごすために気をつけていることや、何か秘訣はありますか?
僕は基本的に準備が好きなんですよ。
準備は大事ですね。
例えば、どこかに行く前にネットで見てチェックします。
どういう場所なのかとか、そこまでどうやって移動するとか、タクシーに乗るか電車に乗るか、お金(両替)も空港ではなくて先に用意した方が良いかとか、天気も調べるし、食べるところも調べる。
泊まっているところからだと、どこで食べられるかとか。
それにどのくらい移動が必要なのかとか。
そういうのが大事で、準備をしておけばストレスフリーになる。
外国では機械からお金を出すだけでも危なかったりしますが、日本は安全だからと言ってそれに慣れちゃうのは危ない。
だからいろんな意味で準備は大事だと思う。
前もって調べておいたり準備しておくと後で楽しめる。
ストレスを減らせる。
僕の場合は、事前に旅のすべての行程をシミュレーションしてしまうくらいです。
それはプライベートでもレースのときでも同じ。
外国ではホテルに歯ブラシとかなんにもないから、そういうのもシミュレーションして準備しますよ。

旅をするときの必需品、ウェアのチョイス方法などについてもお聞かせ下さい。
みんな自分の必要なものってあると思うけど、カミソリとかクリームとか、いつも使っているものを持っていくのでそういうバッグがある。
そのまま旅行バッグに入れるだけのアメニティセットやトラベルセットがちゃんとある。
人によって内容は違うでしょう。
薬も持って行った方がいいですね。
外国では同じものが手に入るという保証はないですからね。
それとウェアは移動手段がバイクかクルマかで大きく違うので、やはりシミュレーションして必要なものを揃えます。
良い場所に行くならジャケットも持って行く必要がありますから、ホテルやどこで食べるかもシミュレーションする訳です。

旅先では積極的に乗り物(車、モーターサイクル、自転車、電車など)に乗りますか? その場合の、選択のポイントや楽しみ方を教えてください。
僕は車が多いですね。
でもレンタカーが取れない国もあるので、そうしたらタクシーになりますね。
電車の方が便利かもしれないけど、レースで行くときは荷物も多いのでどうしてもクルマになります。
僕の場合はバイクを選択するの時は常にプライベートの旅ばかり。
そういう旅では自分のバイクに乗りたい。
雨のときでもね。

あなたが好きな国を3つ教えてください。
日本が好き。
日本は安全でルールを守っていて、しっかりしているところが良い。
危なくないのは素晴らしいし、サービスが凄く良い。
スーパーで袋に入れてくれるのなんて、たぶん日本だけ。
それと便利。
なんでもどこでも24時間の店がある。
それとオーストリア。
自然が半端じゃなく綺麗。
湖、草、木、山、川。
夏も冬も素晴らしく綺麗ですね。
人も優しくてサービスが良い。
あとはスウェーデン。
お母さんの出身なので、子どもの頃からよくバカンスで行っていました。
街が綺麗、ストックホルムですね。
お母さんは田舎の方に住んでいたので自然が多いし、夏は日が長くてほぼ暗くならない。
でも冬は明るくならないところなんか面白いですよ。

お母様がスェーデン生まれなのですか。
ところで、いまさらではありますが、あなたの生まれや育ちはどこですか?

ドイツの田舎です。
シュツットガルトの近くで、ベンツやポルシェを作っている街の近くの小さな村です。
19歳までそこにいました。
レースを始めるまでですね。
レースを始めて引っ越しました。

そうですか。
では、この先、旅してみたい場所はどこですか?

ニューヨークは行ったことがない。
だから1回行った方が良いんじゃないかと思っている。
あとピラミッドも見ても良いかなって。
だけど今はちょっと危ないから。
わざわざ危ないところへ行くというのは、僕はあまり好きじゃない。
友だちには冒険みたいに危ないところを好む人もいるし、砂漠までバイクで行ってしまう人もいるけど、僕はそこまでリスクを取る必要はないと思ってる。

リスクが高いことは避けたいタイプだと言われるのに、レーシングドライバーという職業を選択したのは何故ですか?
一般的にはリスクの高い職業だと思いますが。

お父さんの影響が強いと思います。
僕のお父さんはレース好きで自分でレーサーになりたかったんですよ。
だから、アマチュアレーサーとしてはかなりのレベルまでいっていました。
そんなお父さんだから僕に早くから運転の練習させてくれた。
子供の頃からテレビでいつもF1を見たり、運転するのが凄く好きでした。
ハンドルを触るときとかは、いつも凄く興奮しましたね。
だからプロのレーシングドライバーになること以外考えられなかった。

なるほど、お父さんの影響でしたか。
ではあなたが最初に乗った乗り物はなんですか?

子ども用の小さなクルマがあるじゃないですか。
家の前の駐車場で毎日乗っていました。
3歳くらいかな。
お父さんの膝の上でハンドルを握ったのがたぶん4歳。
スウェーデンで初めて僕がクルマを運転したときですね。
とは言ってもハンドルを切っただけなんだどね。
その後は自転車。
マウンテンバイクが大好きだった。

ではあなたが最初に乗ったエンジン付きの乗り物はなんですか?
そして、その後はどんな乗り物に乗っていましたか?

8歳から普通のクルマで運転の練習をした。
ペダルに足が届かないから、お父さんの膝の上でね。
クローズドの駐車場みたいなところで全部練習したので、たぶん10歳くらいでレーシングスタートができるようになっていました。
真面目にカートで練習を始めたのは13歳から。
友だちは16歳くらいでバイクに乗っていたけど、僕はお父さんから危ないと禁止されていた。
自転車も好きだったけど、本当はバイクにも乗りたかった。
だけど禁止されていたからしょうがなく諦めていました。
だから38歳になってから日本でバイクの免許を取ったんです。

それは意外でした。
一般的なモータースポーツファンの多くは、モーターサイクルから自動車へとステップを踏む人も多いと思いますが、あなたがモーターサイクルに興味を持ったのは何歳くらいですか?

38歳で免許を取ったけど、その前はパドックの中で乗ったくらい。
免許を取る前にサーキット等で走ることも考えたけど、仕事のためにケガすることはできない。
乗りものは限界で動かしたいという気持ちがあるから、お父さんがバイクを禁止したのは正しかったんだと思う。
38歳で乗り出したのも良かった。
公道では限界で走らないと意識してガマンもできるようになったけど、若い頃だとそうは考えられなくてケガをしてしまっていたかもしれない。
でもクルマから始めても上手な人はいっぱいいるよ。
バイクの人も凄い勢いで抜いていく人とか見てると、やっぱり上手な人はいっぱいいる。
抜いていくときのスピードに驚くけど、「やることがわかっている」のがわかりやすい人は大丈夫だと感じる。
大事なのは環境に合わせることと、自分の限界をわかっていること。
僕は大人だから気持ちにセーブをかけられる。
本当はオフロードがやりたかったけど、「あなたの年齢でやるとケガしてしまうよ」と言われてやめた。
オフロードに限らず、やりたいことを限界の範囲で無理をしないなら大丈夫。
運転もそう。
僕だって眠かったりしたらあまりスピードは出さない。
気を付けてゆっくり走る。
そういうことをちゃんとわかって乗るのが大事。
世界中どこに行っても、そういうことをわかってない人を多く見かける気がするけど、ちゃんとわかっている人ならバイクに乗っても平気でしょう。

ちなみにバイクではどんな楽しみ方がベストですか?
一番好きなのは2人で走りに行くこと。
2台で。
◯◯◯まで行こうとか、ここでコーヒーを飲んでいこうとか、ここで休憩しようとか、まだ行ってないルートを探したりとかね。
ヨーロッパなら一番標高が高い道路を走ってみようとか。
そういうことが2人だとラクですね。
3人はグループになるので、ちょっと違う。

今後、モーターサイクルで楽しんでみたいことは?
いずれサーキットでセーフティトレーニングをしたいですね。
クルマでは校長先生として、セーフティトレーニングをよくやっているんですけど。
クルマの限界を教えたり、安全のためにABSの使い方を教えたりします。
バイクでもそういう内容で、ちゃんと先生が前を走って教えてくれて、自分の安全のためにレベルアップしたいという気持ちがある。
まあ、今はちょっと時間がないけど。
それを学べればバイクがもっと楽しくなるんじゃないかなと思っています。

自転車も好きだったということですが、今でも日常的に自転車は乗りますか?
ヨーロッパではいつも乗っていました。
日本では御殿場に住んでいる頃に乗っていましたけど、東京に移ってからは乗ってないですね。
自転車の利用目的は主にトレーニング用。
昔はマウンテンバイクで山に行ったりもした。
自然が好きだけどマウンテンバイクばかりではないです。
ロードバイクも好きだけど、その都度乗るのは住んでいる環境による。
一度ロードのレースに出たこともある。
かつて乗っていた自転車のメーカーは覚えてないけど、90年代の頃に乗っていたレーシングバイクはKONAだった気がします。
モナコのチャリティレースにも出たことがありますよ。

自転車、モーターサイクル、自動車に乗る上で、どれがメインであってもトレーニングやメンタル的に異なる乗り物に乗ることでの相乗効果はありますか?
バイクに乗るときはコーナリングに集中しなければいけない。
どうやって曲がるかとか、いろいろなやり方とテクニックがある。
それをイメージしながら楽しむ。
クルマだと周りを見なければいけない。
それもあってバイクだとちょっと周囲の流れよりも速く走るようにしています。
僕はその方が安全だと考えています。
ドライバーには死角があるので、同じスピードで走るより少しだけ速く走ることを意識している。
クルマで大事なのは周囲を気にしながらも遠くを見ること。
そういう基本的なことに注意しながら違いを楽しんでいます。

日本の街を車やモーターサイクル、自転車などで走っていて、危ないなと思ったことや、世界的にみてよい点や悪い点などあれば教えてください。

街中では信号無視が凄く危ない。
バイクだと停止線の前まで行って、一番早く加速しないといけない。
そこに誰かが信号無視して入ってくると、とても危ない。
特にバイクに乗るときは事故しないように、信号が青でも確認してください。
クルマはハイブリッドや電気が普及して、歩いている人に聞こえない。
そして、歩いている人も音楽を聴いていたり、携帯をいじっていたりする。
だからより意識して注意深く運転するようにしています。

ありがとうございます。
ここであなたの本業についての話を聞かせて欲しいのですが、最も印象に残っているレースは何でしょう?

いっぱいありますね。
一つというのは難しい。
でも、たぶん初めて日産で走ったル・マン24時間の98年かな。
本来走ることが決まっていたドライバーの一人がケガして代わりに出ることになった。
だからほとんど練習もなし。
それでちょっとだけスペインで練習して、サーキットも知らない、サーキットの勉強もできないという状況だった。
今みたいにYouTubeとかシミュレーターもなかったし、だから非常に難しかった。
ただ僕にとってはこれが運命的なポイントだったんだと思う。
気温も良くて、良いラップタイムで走り続けられたっていうのは運も良かった。
その時に良い結果が出せたので、今、日産にいられる。
たぶん人生が大きく変わったレースですね。

今までに乗ったレーシングカーで最も好みのマシンは?
一番好きなのはGT-Rだった。
GT500用で凄く楽しかった。
コントロールしやすいし。
GT-Rは今でもそう。
生産車のGT-R開発時はニュルブルクリンクでレコードタイムも記録しているし、限界域で動きやすくパワーもある。
コーナリングスピードも高かったし、もの凄く好きだった。

では最も印象的だった公道用のクルマは?
それもやはりGT-R。
特に2011年モデルが好き。
ドイツの新しいアウトバーンで、他のクルマが走ってなくて328km/h出せた。
あれは凄く印象的だったですね。
チューニングもしていない普通のGT-R。
そのときは「このスピードで合法で走れるって凄いな」って思いました。
(アウトバーンならでは) ちょうど友だちを乗せていてホテルに着くからアウトバーンを下りなきゃいけないタイミングだったんだけど、「これどうする? レコード出そうよ? 下りるのやめよう」と言ったら友だちも「やめよう」って(笑)。
ホテルは諦めて、レコードを出してからUターンしてホテルに向かいました。
子どもの頃から車の最高速は200km/hという世界で育っていたし、昔のクルマはそんなにパワーがなかった。
290PSとか300PSとかが最高だったけど、今は600PSもあって世界が凄く変わった。
18歳くらいで公道を自分で運転し始めたとき、いつか人生で300km/h超えるクルマに乗りたいって夢があった。
それが漸く叶った。
もちろん300km/h以上出せるクルマは色々ある。
とは言っても一部の金持ちのためのもの。
特別な車だったので、GTRとは話が違い過ぎる。
GTRは一部の金持ちのための特別なクルマではなくて、ちょっと頑張れば多くの人たちが買えるクルマだし、僕はそういう市販車でオーバー300km/hの夢を叶えたかったから、とても感動したんだ。

車も技術も大きく進歩していくと思いますが、車の未来を予想してください。
車はガソリンから電気になるのと、自動運転が急速に進歩するでしょう。
僕が生きている間に車がすべて自動運転に取って代わるとしたら、楽しさがなくなるから自動運転をオフにすることができるような設定にしてほしい。
ただ、レースは人間の能力というところで見たい。
テクノロジーが進化して行くのは悪いことじゃない。
どう考えても自動運転の方が渋滞も少なくなる可能性はあるし、事故でケガをする人も減る可能性は高いでしょう。
だからトータルで考えれば必要な技術であり進化だと思います。

もしも車がそのように進化して行くのだとしたら、今一般の車好きが楽しんでおくべき車のチョイスは?
僕はGTRをお勧めするね。
中古ならば頑張れば多くの人たちが乗れる車で、最高にエキサイティングな上、運転するのが最高に楽しい。
500万円でこの性能や楽しさを手に入れることができるなんて最高に幸せだと思う。
世界中で年式を問わず、GTRの人気はどんどん高くなっているし、年々価値が高くなっているからお買い特だと思う。
是非一度乗ってみて欲しいと思います。

あなたのようになりたい人が世界中にたくさんいると思いますが、あなたのヒーローは誰でしたか?
言っても昔の人で若い人は知らないでしょう。
ジル・ヴィルヌーヴとか。
70年代後半から80年代に活躍したF1ドライバーで、クレイジーなF1ドライバーです。
他にはケケ・ロズベルグ。
ニコ・ロズベルグのお父さん。
それからミハエル・シューマッハは同年代(1歳上)のヒーロー。
だけど同僚でもあり、会えば呼び出されて「お前なにやってんだよ~」と言われるような関係だったから、彼のコンディションはとても心配。

あなたのようになりたい人が世界中にたくさんいると思いますが、アドバイスをお願いできますか?
僕は乗り方やテクニックを人と比べないで、自分のレベルを知ってほしいと思います。
その上でレベルアップを楽しむことが重要です。
クルマなら僕のスクールで「え?」って思える体験が可能だし、ちょっとずつできることを増やして楽しんでほしいです。
僕もバイクはいろいろ勉強中。
自分が下手なことは恥ずかしいことじゃないので、限界を超えるのではなく運転技術のレベルを上げてほしい。
そうすると人生のレベルも上がるんだと思う。
無理やり自分の限界を超えるのは危ないし、ちょっとずつで良いからレベルを上げて、そのレベルアップを少しずつ楽しんでほしいですね。

あなたのようになるために必要となるシビアな側面と、超えなければいけない厳しい現実問題について教えてください。
Burning Desire、強い願望がないとダメ。
どうしても手に入れたいという気持ちを持って、周りが遊んでいても自分はやるんだということ。
でも、なにより自分の人生を大事にしないとけない。
そしてどこまでもストイックにならないとダメだと思う。
良いことかどうかじゃなく、そこまで「自分が絶対」という気持ちを持たなきゃいけない。
ターゲットを高くして、練習、練習、練習……。
頑張ればなんでもできるなんてことはないからね。
今から僕は100mのオリンピックスプリンターになれないとか。
そういう現実を見ながら努力して動いてほしい。
現実的ではないターゲットを作るのは意味がないからね。
また、乗り物を楽しむため、乗り物を好きになるため、ステップアップするためには、乗りものを限界で動かせるところが大事だと思います。
僕のスクールではやっていることだし、バイクでもそういうスクールはあるんじゃないかと思います。
そういう限界を知る経験が安全にコントロールするために必要。
だけどどう考えてもバイクは車に比べてケガする可能性が高いから、そこを安全に教われるスクールはとても大きな意味がある。
それから今後は自動運転のスクールも必要になりそうだね。
まだ完全じゃないというところもあるから、どういうものなのかを知るためにも必要でしょう。
瞬間的な反応・対応の仕方を学ぶべきだと思う。

最後に旅を楽しむ秘訣は?
自分で移動すること。
できれば乗り物を自分で運転してその場所の持つ雰囲気を最大限楽しむこと。
それも事前にいろいろと調べた上でね。




以上がミハエル・クルムさんにお聞きした内容です。
旅、クルマ、バイクだけではなく、上達するため、楽しむためのヒントまで熱く語っていただきました。
皆さんが旅を楽しむ上で、乗り物を楽しむ上で参考になれば幸いです。
長時間のインタビューと撮影にお付き合いいただきありがとうございました。



 
<<previus page

ホームへ戻る ページのトップへ戻る